Banana Games物語

随分更新が滞ってしまったけれど、そのあいだ何をしていたかというと
新アルバムをつくっていたのであった。
オファーが来たのが5月の末頃であり、実際の内容物の製作が8月で当初はその勢いにのって
9月頃に出そうというお話であったのだけれど、
ジャケット関連の作業もじっくりやりたいということになり
この度11月20日に発売ということになる。
録音していた頃はとても暑く汗をかく為に生きているようなかんじだったけれど、
今はもう寒くもうすぐはく息も白くなることだろう。



5月末にディスクユニオンの金野氏からアルバム出さないかという話をもらったとき、
2013年中にアルバムをリリースしたい、という切実な願望があったので
すぐに飛び乗らせてもらった。
どのような内容の音源にするか、いろいろ考えたけれど
(打ち込み作品、もしくは打ち込みとバンド演奏の折衷)
どうせならバンド、The VERY Sensitive Citizens of TOKYOとともに
がっつり録音しようということになり、
ならばバンドアンサンブルをもっとブラッシュアップしたいので合宿を行うことにする。
(この合宿のことを巷ではプリプロというらしいが、
俺はあくまでも「合宿」をやった、ということを声を大にして言いたい)
そして、ミックスは、いわゆるバンド然とした
(僕にとってはちょっと退屈な)サウンドにしたくはなかったので
イリシット・ツボイさんにお願いする。
きっと断られてしまうだろう、とおもっていたけれど引き受けてくれてとても嬉しかった。



そして、合宿の候補地であるが、当初は山中湖あたりの、
まさしくバンド合宿にふさわしき場所で行う予定であったが
時期が時期なので、既にそこは大学生の夏合宿軍団に占拠されており、
出鼻をくじかれ途方に暮れる。
しかし、合宿は是非とも行いたい。
日常から離れ、終電車の時刻は一切気にかけることもなく、音楽をプレイし
可能ならば狂気の沙汰へと突入すること、それを実現させるためには合宿は必須であり、
本アルバムの重要なポイントのひとつであるからだ。
こうなったら東京から離れられればどこでもいい、
ということになり合宿地は群馬県は新前橋へと変更される。



そうして、時は過ぎ8月のアタマにJRで新前橋へ。
4時間ほど揺られ、おそらく関東でもっとも暑いであろう場所へ。
予想通りそこには何もなく、娯楽は自販機。
我々がこれから三日間演奏することになるスタジオは”YUME”スタジオ。OMG...
あきらかに元はカラオケ店だったところを改装したような内装。
二階では子供連れのママさん達がエアロビか何かにいそしんでいる。
二日目にベースの厚海くんがお腹をこわしてダウンする、
このアルバムに収録するための曲を自分がまだ完成できていない等の
トラブルに見舞われつつも朝から夕方まで、
スピーカーから流れるクリック音で脳を振動させながらがんばった。



そうして、東京にゲットバックしてから一週間後に
都内は池袋のミュージックオルグにて録音を開始する。
用意された時間は4日間。
オルグは普段ライブ会場としてしか知らなかったので当然不安はあったが、
今回エンジニアをやってくれた馬場ちゃんのナイスな仕事もあり、全然いい音で録れるじゃん!
録音は合宿やったりにもかかわらず自分がアレンジ変えたいと言い出したり、
なんか違和感のあるところを何回も演奏してもらったりしたが、
メンバーのみんなのミュージシャンシップによる応答で
(最終日に池袋の路上にとめていたマイ・チャリを撤去されたことを除き)無事に終了した。



この時期は、金が極限までなく人生的にはどん底にあったけれど、楽しかった。
現実に生きていない感覚があったし、毎朝、野方から池袋までいそいそとチャリで駆けていった。
こういうことのためならすべてを捧げることは可能だし、またやりたい。



それと同時期に合宿での録音をもとにceroの荒内くんにキーボードをオーバーダブをお願いする。
彼のスケジュールもタイトだったけれども、短期間で素敵なテイクを重ねてくれ、
予想を超える演奏も加えてくれたことには感謝。
これでアルバムにロマンティシズムが加味されることとなる。



マイクロフォンを震わせてやる作業が終了したところで、自宅にてシンセサイザーのオーバーダブ。
シンセサイザーは僕のなかで一番好きな楽器なので自分でやる。
シンセは物理法則へのささやかな反抗であるとおもっていて、
もちろん実際には現実の音として耳に届くわけだから
物理法則に則っているけども、ありものの楽器にはない音色、
そして機械でのコントロールによる音階及びリズムの動きが
喚起するイメージ、奔放さ、出鱈目さ。
イメージすることで僕らは退屈さが免れているし、
イメージがなけりゃあ、この世は退屈だ、ヘルだ、糞のかたまりだ。



おーと、、、!



出揃ったピースを携え、イリシット・ツボイさんのもとへ。
そして、およそ一週間後、最終ミックスが完成したとのメールがツボイさんから届き
期待と不安を抱きながら音源をダウンロードする。
(今回の録音では血と汗と涙にまみれながら
インターネットという技術の恩恵に大いにあずかったものだ)
その時は夜中だったが一気に目が覚めてしまった。実
際のドラムキットやベースアンプから
流れてこないであろうファットな低域、時折あらわれるストレンジな上ものの処理。
よく聴くとノイズがループされていたりもする。
おお、これで戦える。俺も戦える。糞のかたまりよ、さらば。地獄ももう飽きた。
みよ、天上のエンジェルを。あの賛歌は誰のため?



お、お、お、おーと、、、!



あとは外見(そとみ)だ。この子に素敵な服を着せあげねばならない。
高円寺のdaredevilへ。ずっと昔からお世話になってるスエタカさん、コマツさんのもとへ
アルバムジャケットのスタイリングをお願いしに行く。
そして、スタイリングだけでなく、今後もミュージシャンというか人前に出ることに対しての
心得等をまことに厳しく指導される。この二人にはほんとに頭あがらない。
撮影は御苑のスタジオにて。ちゃんとした撮影スタジオだ。カメラマンは小原さん。
この撮影はこれまた半端なく修羅場であり、半ば半狂乱になりつつ終える。
だが、これで個人的には被写体となることはいかなることであるか、
をおぼろげながらも理解する。



ジャケットデザイン、マスタリングなどを(スムーズに進行したとは決して言わないが)
無事に終え、今、「Banana Games」はあなたの耳に飛び込むのを待っているところだ。



あらためて、11/20、藤井洋平「Banana Games」発売。
よろしく!



http://diskunion.net/portal/ct/detail/IND13691

http://www.jetsetrecords.net/%E8%97%A4%E4%BA%95%E6%B4%8B%E5%B9%B3-BANANA-GAMES/p/812004702942

※発売日までに全曲解説でもやってみようか、せっかくだから。